『ズッコケ中年三人組』那須正幹

ズッコケ中年三人組

ズッコケ中年三人組

先日読んだ本について書きます。懐かしかったなぁ。
[あらすじ]
1978年に小学六年生だった三人組も今では不惑を迎える年齢になった。冴えないサラリーマン生活にうんざりしながらも、何となくな日々を過ごす三人。そんな彼らのもとにかつて対決した「怪盗X」から挑戦状が届き…。
[感想]
私が『ズッコケ三人組』を読んでいたのは小学校の頃のことで、確か高学年になるまでは割と熱心に読んでいたような覚えがある。図書室の『ズッコケシリーズ』は全て読破し、新刊も親にねだって買ってもらっていたので、熱心な読者だったのだと思う。小説、というかお話の面白さに嵌っていったのはこれが始まりだったのかもしれない。
それだけに前半の50頁程度まではものすごく悲しかった。だってあのハチベエが水商売の女を口説いてて、モーちゃんは会社が倒産して都落ちしてるし、ハカセは学級崩壊クラスの担任教師だよ。当時の思い出がベコベコに壊されて、軽くめまいがしたもんです。勘弁してくれよな。
と、思っていたらそれ以降は意外に面白かった。具体的にいうと「怪盗X」が姿を現してからはストーリーがポップになってきて、当時と同じ気分で読み進めることができる。事件が起きたことで、彼ら三人組が興奮して思わず昔の姿に戻ったからなのだね。しょぼくれたおじさんになっちゃったとしても当時からパーソナリティなんてそう変わるはずもないし、子供心って何だかんだ言ったって残ってはいるよね。
「怪盗X」を追っている中年三人組は短絡的な行動といい間の抜けたやり取りといい、本当に当時のままで読んでいて楽しかった。懐かしくて嬉しいぜ。これは小説だからできることだよね。だって映像作品だったらどうしたって中年の姿が目に映っちゃうじゃない?小説だからこそ子供の姿を勝手に想像して楽しめるわけじゃない?小説で良かったと思ったよ。
ラストは予想できちゃったけれど、別にそう悪いものじゃなかった。私は十分満足です。子供の頃に『ズッコケ』を読んでいた人は楽しめるはず。ただ、色々と過去の作品からエピソードを拾ったりして、いわゆる読者サービスをしているので、そのオリジナルを知らない人はちとつまらんかなとも思った。「怪盗X」の一連作品と『うわさのズッコケ株式会社』、それとついでに『ズッコケ三人組の未来報告』を予め読んでおくとより楽しめるでしょう。
タクワン先生、懐かしい!