『団地ともお』小田扉

団地ともお (10) (ビッグコミックス)

団地ともお (10) (ビッグコミックス)

最近の私は「ともお」に夢中。内容は団地住まいの小学四年生「ともお」のほのぼのした日常をギャグ風味で描いたもの。団地の友達と遊んだり、学校で先生に怒られたり、隣のクラスとサッカーで競ったりと「小学校もの」としては王道の類のものでしょう。
小学生を描いたマンガといえばたやすく思いつくのが『浦安鉄筋家族』と『ちびまる子ちゃん』で、実際、それらを足し合わせたのがこのマンガといってもさほどの抵抗はないでしょう。ただ、忘れてはいけないのが作者の小田扉さんはかつて『こさめちゃん』を描いた人だということです。
こさめちゃん―小田扉作品集 (KCデラックス (1388))

こさめちゃん―小田扉作品集 (KCデラックス (1388))

静かな、どこか抜けた微笑ましい日常。そこに消しがたく悲しみが付き纏っているのが『こさめちゃん』で、これを読み返すと私はもうどうしようもなくなってしまう。物語の背後にある事実はどうしようもなく悲しいのに、キャラクターが皆「馬鹿」だから、その現実を理解できずにいる。それがとんでもなく辛くなるときもあるし、また同時に救いにもなっている。この世界観は『ともお』とかけ離れたものだと思われるかもしれませんが、いえいえ、私はそうは思いません。
確かに小学生の日常はお気楽で楽しい。ただ、私自身の過去を思い返すと、今だからこそ「おやっ」と思うことにいくつか思い当たります。転校した同級生は苗字が変わっているらしいこと、鉄棒から落ちて大怪我をした隣のクラスの子供は引っ越していないのに隣の学校に通っているらしいこと…。当時の私にはその意味するところが分からなかったし、半月後にはそんなことがあったことすら忘れていました。今では「両親の離婚」だの「障害児教室」だのとそれを説明する言葉を理解していますが、それはやっぱり小学生には荷の重いタームなんです。
「ともお」の毎日は楽しい。それでも楽しい小学校生活には時に悲しい現実があって、その現実が思い出したように作中に顔を覗かせます。小学生時の私が理解できなかったように、「ともお」もまたそれが分からない。でも、『スピリッツ』*1を読むような大人の読者はそれが分かってしまうじゃない? 辛い現実の当事者になってしまった人たちがどうやってその後を過ごすのかが目に浮かんでしまうじゃない? だから「ともお」は楽しいけど、やっぱり私には悲しく思えてしまうんだ。
単なる「小学生の夏休みマンガ」はロリコンみたいで気持ち悪い。身も蓋もない現実ばかりの「大人のマンガ」は芸がない。その手の趣向の持ち主は『団地ともお』をぜひ。とぼけた「ともお」のとぼけたコメントは嫌な現実をちらっとだけ微笑ましいものにしてくれます。
というわけで、本日の日記はこんなところで。明日はM嬢が日記を更新します、多分。色々な想像をしながら明日を待たれよ!
執筆者:ナイトウ

*1:『ともお』掲載誌