映画音楽について その2

少し前にdavid lynchの映画音楽について書いた覚えがあります。そこで記した通り私は彼の映画の音響が大好きで、映画に限らず音響を考える際にはそれを一つの基準と考えています。とはいえ、あれはあくまで一つのやり方。映画の雰囲気が変われば当然、音響もやり方が変わってくるわけで、別にリンチ作品だけが優れた音響だとは私は思いません。
そこで、今回はリンチ作品以外で私のお気に入り映画音楽を紹介したいと思います。極端に古いのは無しで、割と最近のものに絞ってみました。ついでに言うと私は邦画を全く観ない人間なので、ここでは洋画限定と致します。それでは以下。
hedwig and the angry inch

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ [DVD]

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これ、映画だけでなくサントラもそこそこ売れたのでご存知の方も多いのではないでしょうか。かの浜崎あゆみ嬢も涙したという実に感動的な作品です。作中ではdavid bowiet-rexを思わせるグラム・ロックが演奏されていますが、それがお話の展開と強くシンクロしていてグッときます。過剰にドラマティックで、全てを終わらせようとするロマンティシズム。儚い、美しい、素晴らしい。
『the piano』
ピアノ・レッスン [DVD]

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これもやはり有名。映画そのものもwell madeといった感じで良かったけれど、やはり印象に残るのはマイケル・ナイマンが作曲した楽曲です。役者の抑制された演技や緊縛的な衣装から微かに感じられるエロティシズム、それらを上品に引き立てる音楽はまさに流麗。ヒロインがゆっくりと海に沈んで行くシーンが背景音楽と共にいつまでも忘れられません。
talk to her』
トーク・トゥ・ハー リミテッド・エディション [DVD]

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この映画はとにかく静かで綺麗だった。誠実で切実な愛のお話です。傍から観ると滑稽とも取れる登場人物を音楽とカメラワークが優しく包みこんで、何ともいえない温かい気持ちにさせてくれます。音楽って監督の視点なんだなと今さらながら気付かされました。観終わった後も余韻が残る魅力的な映画音楽です。
『big fish』映画は確かに高級芸術に区分されるものかもしれない。とはいえ本来的には大衆娯楽であったわけです。映像を通して笑って泣いて、そんな映画の面白さをたっぷり感じさせてくれる作品です。様々な色合いを持った音楽が作中では使われますが、監督はこの音楽を楽しみながら選んだのだろうなと感じさせる何かがあって、そこに私はグッときてしまいます。子供心を忘れないことって本当に大事なことだよね。ちなみに監督のティム・バートンはあのディズニースタジオ出身。「らしくない」ようで「らしい」演出にやっぱりグッときます。
『little miss sunshine』昨年の映画なのでご覧になった方も多いのでは。ほころびだらけの家族が何度かバラバラになりかけながら、ワゴン車に乗って長い長い旅をするというお話なのですが、冒頭の音楽でいきなり胸をわしづかみにされます。00年代特有のニヒリズムを通過した後のポジティビティとでもいうべきか、そんな映画の世界を見事に表しているように私は感じました。ドラマティックにはなれない人たちなのだけれど、そこにもやはりドラマがあるわけです。音楽って雄弁ですね。