『命の山 高尾山』酒井喜久子

命の山・高尾山

命の山・高尾山

まずはこの本を。
高尾山についての本というのは実は案外多いのです。試しに近所の図書館HPで「高尾」と検索をかけてみましょう。自然写真から山歩きガイドまでと多様なテーマ、そして、思ったより多いその数に「へぇ」とか「ほぉ」とか思わされることでしょう。フランスの人に「すごい!」と評価されるだけのことはあるというわけです。で、この本ですが、数ある「高尾本」の中で、はっきりいってダントツでオススメできる内容となっております。
内容を乱暴にまとめてしまうと「高尾山と圏央道計画」ということですが、その切り口が非常に硬派かつ骨太。それでいて敷居は実に低いという初学者には大変ありがたいものです。前半で圏央道計画とその影響について触れ、中盤で反対運動のキーパーソンを紹介し、最後に圏央道計画に見える日本という土建屋さんの問題点をビシっと指摘しております。私個人としては中盤のキーパーソン紹介がツボであったわけですが、それ以外も「勉強になるなぁ」といった感じで非常によくまとまっております。高尾山の問題点をざっくりと理解したいという人は是非本書をお手元に。
余談ですが、ヤングリメンバーの中でも圏央道計画についてきちんと理解している人って案外少ないんじゃないのかと私は思うことがあります。仮に「高尾と環境と圏央道について述べなさい」と訪ねられたときに「逆転層と自主アセスと立ち木トラストです」と答えられる人がどれだけいるのか非常に心許ないなと。というわけで、これは内輪向けの話題ですが、せっかく高尾PJにコミットしているのならば良い機会なので本書をさらっと読み上げてみてはどうでしょうか。ま、余談です。
ついでに余談をもう一点。著者の酒井さんは多摩地域近辺での自然・環境をテーマに取材・執筆を行っていた雑誌記者の方だそうですが、伝え聞くところによると圏央道の反対運動にもコミットされていたようです。なるほど確かに本書にある反対運動キーパーソンの方々へのインタビューは非常にリラックスした空気の中で行われたような印象があります。親しかったのね。だから現場の人の本音というか建前じゃない感情を記録できたのね。私達の映画もそんな空気が出せればと切に祈るものです。
と、上記のようにべた褒めした本書ですが、悩ましい点が一点あります。それはといえば少々古い本だということで、初版は何と1994年。10年以上も前の本なのです。つまり現在の高尾については言及がないと。では、「高尾の今」を知りたいあなたはどうすれば良いか? 答えはもちろん、高尾山に足を運ぶこと。そしてそして、Japan Young Greensの高尾ドキュメンタリーを鑑賞すること、これに尽きるわけです。映画の完成は今月末です。ワクワクしながらお待ち下さい。
というわけで、本日の日記というか映画の宣伝はここで終わり。
担当:ナイトウ