黄色いテープ、白いテープ

金曜日の妻、ならぬ金曜日の素浪人ラガーです。
今日は高尾山の土地のことです。現在、事業者側(国交省やゼネコン)と地権者側(住民、自然保護団体)は土地区画の境界線を巡って争っています。地権者側は「ムササビ党」という地権者グループを作って運動を進めておりまして、その中でも「立ち木トラスト」運動などを大きく展開し、高尾山のトンネル工事をストップさせようと図っています。それに対して事業者側は、問題の土地について、「そこは地図上では国の土地である。従ってどのように使おうと構わない」という姿勢を崩しておりません。しかし、住民側はその「地図」自体にそもそも不備があるとして事業者側の論拠を批判しています。

とまぁ、議論は膠着しているようには見えますが、実際の工事は着々と進んでいきます。既成事実を積み重ね、理非曲直は曲げられるというのが実際政治の姿であることを思えば、当然のことでしょう。ただ、地権者側も指をくわえて見ている訳ではなく、何らかのリアクションを起こす必要が生じてきます。ということで、今日は地権者側が主張するトラスト地をロープで囲い込む作業のお手伝いをしてきました。この土地を囲い込めば工事が止まる、という訳ではないのですが、それでも住民側が主張するそのトラスト地は国交省も「国の土地である」と主張して引かない場所でもあり、最終的にはこの地点についての「土地収用委員会」を開く必要が生じてくるかもしれない、ということです。即ち、地権者側は先月一方的に打ち切りとなった土地収用委員会を再開させ、高尾山トンネル工事を遅らせるために牛歩戦術に出た、というところでしょうか。
さてさて、土地の囲い込み作業を終えた私たちは次に立ち木の一本一本に黄色いテープを巻く作業に移りました。しかしその時気が付いたことには、何故か立ち木には既に白いテープが巻かれていたのです。私はてっきり「地権者側が以前巻いたものだろうなぁ」と思っていたのですが、どうやらこの白いテープは国交省側が巻いたものだと分かったのです。私たちは結局その白いテープの上から黄色いテープを巻いて歩いたのですが、何だか人の営みのバカバカしさに私は白け切ってしまいました。

白いテープは大分以前に巻かれたものなのか、木肌にはクッキリとテープ跡が残っていたのです。綺麗な木肌にハッキリ分かる黒ずんだテープ跡、そしてその上から黄色いテープを巻きなおす私たち。テープを巻かれる木にとっては白も黄色も無いですよね。愚かな人間たちの争いに巻き込まれて、窮屈なものを肌に締め付けられる。木にとってはそれだけのことであって、自分を殺そうとする人(事業者側)、守ろうとする人(地権者側)なんて区別は露かけらも無いはずです。
「自然の権利訴訟」というテーマが法曹の議題として上がって久しいですが、はて、本当に木の言葉や、山の言葉を代弁することが出来る人なんているんでしょうか?それとも、「自然の権利」なるものは法廷闘争用の便宜的な題目に過ぎず、「自然の権利」なんてものは言語明瞭意味不明瞭の典型なのでしょうか。しかし、それを言い出せば「権利」なる概念自体が近代のデッチ上げであるということも言い出そうと思えば言える訳で、そうなると何時までも議論が終わらないので今日はこの辺で止めておきましょう。

とりとめのないことを書き殴ってしまって申し訳ありません。これからちょっと気晴らしに、いつもの店で呑むこととしましょうか。
執筆者:ラガー