高尾で見る雪はこれが最後ねと…

金曜日の執筆担当者、ラガーです。

この一週間は実にたくさんのことがあり、様々な方に会いました。 

まず、先週20日の日曜日には八王子市長選挙の告示第一声、出陣式を取材に行き、現職の黒須候補、新人の橋本候補、どちらも特色ある選挙戦の火蓋が切って落とされました。現職の黒須候補は町村官房長官石原伸晃自民党東京都連会長、萩生田光一地元選出代議士を揃え国政との確かなパイプを強調。さらに公明党や連合の応援演説も加わり、磐石なる組織戦を展開しているように見受けられました。中でも目を見張ったのが、周辺の市町村長が次々と紹介されていったことです。東京の西では首長同士がタッグを組んで国と政治交渉を行っているんだろうなぁということがリアルに感じられる、そんな「連合戦線」の紹介でした。

対する新人の橋本候補は、八王子駅北口で第一声を上げました。川田龍平参議院議員が応援に駆けつけ、道行く若い人たちの声援に手を振って応えていましたが、川田さん実に雰囲気がありましたね。やはり激戦の参議院東京選挙区を勝ち抜いて来ただけあって貫禄たっぷりです。
さて、今回の候補者は川田さんではなく橋本さん。橋本さんもどっしりとして落ち着いた話し振りでした。街宣車の周りには若い人たちが各々に楽器を持ち、賑やかに踊り回っていましたが、若い人が盛り上げる選挙というのはそれだけで好感を持ってしまいますね。前回の八王子市長選挙の20代の投票率は13%だったと聞いたのですが、スゴイ数字ですね。これ以上下がりようがない位低いです。「政治の季節は終わった」と言われてから久しい年月が経ちますが、投票に行かなかった残り87%の20代が見ている風景を、ぜひ眺めてみたい気がします。「政治主義者」でも「反政治主義者」でもない「非政治主義者」たち。こんな時、「愛の反対は無関心」と言ったマザー・テレサの言葉を思い出します。「憎しみ」は愛の裏返しだけれど、「無関心」は愛の対極にある思考。ゼロ。可能性の喪失。

月並み過ぎて揶揄られそうですが、言わせて下さい。

「みんな、選挙に行きましょう」。 


話題変わって、高尾の映画についてです。

この一週間は圏央道反対派からインタビューを2件、圏央道推進派から建設現場案内を1件頂き、ぐぐっと映画に展開が出てきた感じです。推進派からコメントをもらうのは今回が最初になりますので、これについて少々書いてみたいと思います。

1月23日水曜日。関東地方に雪が舞った日の早朝、私はいそいそと起き出しテレビで天気予報をチェック。外は昧爽の闇が覆う午前6時、テレビでは新宿に雪が降り出していることを告げていました。私は「待ってました!」と膝を打ち、登山用バッグにいつものセット(キャメイラ、ヴィデオ用マイク、テイプ)を放り込み、肩にはマグニチュード7の地震が来てもきっとブレない愛する三脚を担ぎ、意気揚々と最寄駅へ急いだのでした。

その日の昼。私は高尾山の白化粧した姿をバッチシキャメラに収め、鼻息荒くある場所へ向かっておりました。高尾山口駅から徒歩15分、圏央道高尾トンネルの建設を担っている、相武国道事務所です。

相武国道事務所の計画課長、Fさんにご案内頂いた八王子南IC建設現場、並びに高尾トンネルは雪の降りしきる悪天候の中、着々と工事が進められていました。坑道内を行き交う大型ダンプカーのクラクション、厚い湿気を含んだ坑内の熱気、巨大なトンネル掘削機の姿。初めて見る高尾トンネルの内部は圧倒的な迫力に包まれていました。そしてトンネル内で作業する現場労働者のヘルメット姿に、私はいつの間にかあの高倉健主演、森谷司郎監督の映画『海峡』を彷彿としていたのです。

「ウワ〜デッケエ…。カッケー!!!」

「高尾山ヲ守ルンダ!」、との思いで始めたドキュメンタリー映画の制作でしたが、その本体たる高尾山の胎内に入った最初の瞬間の感想は、予想とは懸け離れた、情けな〜いものでした。。。

しかし、「カッケー!」と思ったことは事実。事実から目を背けずに、自分が感じたように、ありのままの現実を映していかなければイケナイなと、かつての日の転向者の私は、ここで再びアッサリと、転向を果たすのでした。

もちろん、大方冗談ですからね。

とは言え、進行している現実は圧倒的に雄弁なものです。私がすべきことは、この現実を解釈しようとすることではなく、事実を事実として接していくこと。森達也監督ならば、「ドキュメンタリーから制作者の息遣いは消せ、なんて考えはバカだ」と仰りそうですが(というか現実にそう仰ってますが)、それはいくつもの作品を作ってきた監督だからこその言葉ですよね。今回が映画の処女作となる僕らにとっては、まずは型通りの、というか制作者の息遣いを殺した作品を作り上げてみることが第一歩だと思います。

ともあれ、圏央道推進派の人たちの中にある「プロジェクトX」を描き出さないことには、この映画は成立しないのですから、今月と来月、しっかり取材を進めて行きたいと思います。

この春、東京を離れる予定の私にとって23日の雪が最後の雪にならないことを祈りたいものです。だって、まだ山頂の雪景色を撮影してないんだもん!!!

本日はこんなところで。

失礼します。

執筆者:らがー